小さな世界に大きな驚き ~ 飼育ゲージで生物観察

突然ですが、これは一体何でしょう。
壁や天井を自由自在に這い回る猫目の生物。そう、ヤモリです(正確にはヤモリをおなか側から見た図)。

こんなふうに、普段はじっくり見る機会のない生物を観察できるのが「ビバリウム」。ビバリウムとは、その生物が本来生活していた生息地の環境を、人工的に再現したものです。 ちなみに、陸上の生物用なら「テラリウム」、水棲生物用ならば「アクアリウム」、水陸そろったものは「アクアテラリウム」といいます。
森を切り取って部屋に置く──。そんなビバリウムの楽しみ方はいろいろですが、今回ご紹介するのは親子で楽しめる簡単ビバリウムです。

ヤモリをおなか側から見た図

不思議な生き物発見

さて、時は夏の終わり。雨上がりの蒸し暑い日のことでした。編集部のある六本木のビルの横に、ケヤキの木があります。ある日、何気なく目を根元のあたりに移すと、そこに不思議な形をしたものが落ちていました。「なんだろう?」と思い、いくつか拾ってみると、それは5ミリほどの小さな巻貝のような物体。植物の一種だろうか、と思って見ていたら、なんとモゾモゾ動きだしたのです!
「わーっ、なんか出てきた!」小さな貝の中からにゅるっと出てきたのは、ツノの突き出た黄色い生物。さっそく調べてみると、どうやら『オカチョウジガイ』という生物のようです。

せっかくだから生態を観察しようということで始めたのが「ビバリウム」作り。冒頭でも述べたように、ビバリウムは、その生物が本来生活していた生息地を再現するものなので、観察には最適です。昆虫採集は子どもの頃によくやるものですが、虫かごのなかに入れて一晩観察するのとちがい、ビバリウムなら、環境さえ整えば長期間観察することが可能です。

イメージ:不思議な生き物発見

ビバリウムを作る!

まず用意するのは、ビバリウムの容器。プラスチックやアクリル、ガラス製などさまざまありますが、編集部ではガラス製のものを使いました。そして、オカチョウジガイを発見した場所の土やコケ、石。雰囲気を出すための流木や観葉植物(今回は「ラインゴールド」)も用意。道具は園芸用のスコップ一つで間に合います。

アイテムが揃ったら、ここがビバリウムの最初の楽しみである「レイアウト」が始まります。手前よりも奥を高めに、右から左にかけてなだらかな下り坂になるように土を盛ります。平坦にするよりも傾斜をつけることで、小さな空間に奥行きが生まれるんですね。そして、今回は貝たちの発見場所にあったコケを上にかぶせてみました。あとは、石やコンクリート片、落ち葉などを配すだけで完成!今回は、水場として小さなガラス容器を地中に埋めてみました。池のつもりです。

イメージ:ビバリウムを作る!イメージ:ビバリウムを作る!見イメージ:ビバリウムを作る!

生体を入れて観察!

そして、第二の楽しみ「生体投入」。オカチョウジガイを、拾ってきた場所の土と一緒にビバリウム内に入れます。確か彼らがもぞもぞ地表に出てきていたのは、雨上がりの午後。そこで、雨に見立てて水を降りかけてしばらくすると、そろって顔を出しはじめました。そして思い思い(?)に、移動を始めます。どうやら石や流木、土塊の裏がお気に召しているようです。

そんな時、タイミングよく同僚が捕獲したのが冒頭の『ニホンヤモリ』。夜行性のヤモリは、電灯に集まってきた昆虫を捕食する爬虫類です。
「どうせなら、これも入れちゃおう!」
ということで、ヤモリ投入。
時を同じくして、「外にこれがいたよ」と、また別の同僚の手には、緑色の物体が2つ。どうもコガネムシのようです。調べてみたら『アオドウガネ』という種類の甲虫でした。発見したのは椿の葉の上ということでしたので、さっそく葉をちぎってビバリウム内部にレイアウト。

出来上がったビバリウムに満足して、すっかりその存在を忘れていた頃、「食べてる!」の声が。ビバリウム内を覗いてみると、アオドウガネが静かにお食事中でした。けっこう食べる速度が速いことが判明。あまり噛まないみたいです。
また、昆虫食のヤモリのためにコオロギを捕獲。中に入れてみると、やはり動くものに反応するんですね、ヤモリ。目の前を通り過ぎる獲物を一瞬にしてパクリ。周囲からは「おお…」というどよめきが。こんなふうに、食事風景を間近で見られるのもビバリウムの醍醐味です。

ちなみにヤモリの足についているのは吸盤ではなく、1平方センチメートルに数億本の毛がびっしりと生えています。この毛は、非常に細かいので、壁との接点が多くなり、毛の分子と壁の分子が引き合う「分子間力」によって、ヤモリは壁や天井を自由に走りまわれるのです。

こうして出来上がった簡単ビバリウム。自然の一部を拝借してきたわけですから、そこには小さくとも植物や生物の命の営みがあります。小さな小さな世界ですが、親子で覗きこめば、たくさんの驚くべき発見があるのです。
虫の音が耳に心地よい秋。スズムシやマツムシなど、秋の使者たちがどんな暮らしをしているのか観察してみるのも風趣がありますね。

イメージ:生体を入れて観察!
イメージ:生体を入れて観察!
イメージ:生体を入れて観察!
ここポイント!
●土や植物などは、できるだけ生体の生息場所のもの、あるいは同等のものを使用しましょう。
●自然保護地域などの生体や植物はとってきてはいけません。
●生体は、一定期間観察したらもといた場所に逃がしてあげましょう。
●生体を触った後は必ず手を洗いましょう。
●何を食べているか調べて、餌となるものを用意するのを忘れずに。
取材メモ
  • 今回は、オカチョウジガイ、ヤモリ、アオドウガネにお引き取りいただいた後、カマキリやコクワガタもやってきた。
  • カマキリが、猫の毛づくろいのように“鎌づくろい”することを発見。
  • 中に小さい人形を仕込んで散歩中の人に見立てた。結果、時々、巨大生物に襲われる光景が見られて面白かった。
  • オカチョウジガイが数個、卵を産んだ。直径0.5ミリほどしかない。ちゃんと生まれて、ちょっとずつ成長している。
イメージ:コクワガタ イメージ:カマキリ イメージ:散歩中の人 イメージ:オカチョウジガイと卵

ラインナップ

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